クリプトコリネは東南アジアを中心に分布するサトイモ科の水草で、60種ほどが知られているが、2002年にも新種が見つかっているので、これからもその種類数は増えるだろう。その生息地はジャングルの中のブラックウォーターのピートスワンプであったり、山間部のクリアウォーターの小川であったり、大河の川原であったり、海に近い河口などと、さまざまな場所だが、共通していえるのは水が動いている場所であり、池や沼のような止水域には生えないということである。
クリプトコリネは大別して二つのグループに分けられる。ひとつは人工的な増殖が容易なグループと、もうひとつは栽培が難しいグループである。前者にはスリランカ産のC.ベケッティやC.ウェンティ、タイやインドなどに産するC.バランサエ、C.レトロスピラリスなどで、シンガポールの水草ファームなどで増殖され流通している。
一方、C.コルダータやC.シュルジィは人工増殖が難しくマレー半島で業者によって自然のものが採取され、水草ファームから流通するが、安価で取引されるため大量に乱獲され、現地はかなり危機的な状況になっているといわれる。ボルネオなど水草業者がいない場所のものはプライベート便で時折入荷があるが価格が高いのがネックである。
栽培は水草ファームで増殖されている種類は容易だが、環境が急に変化することには弱く、クリプトコリネ特有の溶ける(急に葉がセロファンのように半透明になって無くなってゆく)病気になることもある。そのためセット仕立ての不安定な条件の水槽には、すぐに植えないようにする。まず、有茎水草などを植えて、時間をいかけて、よいバクテリアが十分繁殖した環境を作っておき、その後植えるようにすると安全である。低底はソイル系よりも大磯など砂利系を好み、魚や水草を飼育し始めて、1ヶ月以上経過した方がよい。光量は60センチのレギュラー水槽で20ワット型のランプ2灯あれば十分で、強すぎる光はよくない。
水質は弱酸性から弱アルカリ性pH6.0-7.5くらい、KH3-4ある方が生長はよく、炭酸ガスはpHが7.0以下なら添加の必要はない。逆にホシクサ類を育成するときのように多くの炭酸ガスを添加するのはKHのある程度高い環境ではpHの変動が大きくなり、あまりよいとはいえない。クリプトコリネの育成で最も難しいのが肥料の投与で、これは溶ける病気を述べたように、肥料を投与することで、環境の変化が起こるからだ。つまり、水に溶けている肥料の濃度が高くなることをクリプトコリネが他の水草よりも敏感に察知し、いきなり高濃度にすると許容範囲を超えて溶け始めてしまうのである。そのため、肥料は少量ずつ投与するようにしたい。
栽培の難しいタイプは水中で育成するのではなく、鉢植えにして水上葉で楽しむ人が増えている。その醍醐味とは開花である。水上葉にすると簡単には溶けないし、育成の難しい種類でもランナーによって子株を生ずることもあるのだ。方法はプラスチックの鉢にミズゴケや赤玉などの園芸用土で植え、越水にする。水槽に蓋をして湿度をキープ、湿度は25-30度、照明は60センチ水槽で2灯程度。直射日光には当てないように。 |