熱帯魚の水槽に使える水草の中には水生のシダ類もある。突然変異によって葉の形が変化したトロピカやウインデロフなどのミクロソリウム類、ミクロソリウム・ナローリーフ、ボルビティスなどの陰性植物、ウォータースプライトやウォータークローバー、ミズニラなどの陽性植物に大別され、それぞれ栽培方法も異なる。
まず、ミクロソリウム類はインドシナ半島を中心に自生、ボルビティスは西アフリカ産であるが、ともにジャングルの中の河川の水際に生育し、乾季は水上葉に、雨季は水中葉に変化する渓流帯植物である。雨季に水中葉になる性質を利用して水槽に使用するが、この仲間はとくに育成が容易で、特別な装置を必要とせずに栽培できるところがよい。極端にいえば、たった1灯のランプで、肥料や炭酸ガスなどを添加しなくても生育させることができるが、水草育成用品を使用すれば、使用しないよりはよりよい生育が望める。
60センチ水槽で20ワットのランプ1-2灯、水質は弱酸性pH6.0-7.0が適しているが、適応力は高く、極端な数値の水質でない限り対応する。KHは3-4程度ある方がよく、ソイル系の低底のごく軟水では葉が勢いよく展開せずに縮れてしまうことがある。水温は28度までがよく、30度を超える日が続く真夏に、葉が褐色になって枯れる病気が発生し、触れ合っているところから感染する。対処は病気になった葉を切り取ることで、毎日様子をみて切り取る。病気がひどく葉がほとんど無くなってしまっても、匍匐する根茎は生きていて、秋になり涼しくなると復活してくる。
この仲間は砂利に細い黒褐色の根毛を絡ませて生長するが、根毛がものに絡みつく性質を利用して、さまざまなものに活着させることができる。流木、石、岩などで、表面が滑らかなよりはざらざらしたものがよく、釣り糸やゴムバンドで活着させたい場所に固定するのである。最初は葉の向きがあらぬ方向を向いているので、しょうぼいが、生長を始め葉が展開するにしたがって形状が格好よくなってくる。ミクロソリウムは根茎が斜め上方に向かって伸びるので、ある程度生育させると、活着面から浮き上がってしまうことがあり、そうした場合、剥がして新たに固定し直す。ボルビティスは根茎が活着面に対して密着するように生育するので、そのようなことはない。
その他のシダ類は、ウォータースプライトは浮かべても低底に植えても育成できる便利な水草で、弱酸性から弱アルカリ性の水質に適応し、炭酸ガスなど添加しなくても、少量の液肥を投与するだけでも生育し、柔らかく複雑に切れ込みのある葉はグッピーなどの胎成魚の採子に利用でき、葉の裏にできる不定芽という子株でいくらでも増殖する。ウォータークローバーの中でもヨーロピアンクローバーと呼ばれる種類は葉が料理に使う極小のおたまのような形状でおもしろい。流行のグロッソスティグマと似ているが生育はずっと穏やかで、繁茂が速く、すぐに植え直さなければ内部から枯れてくるグロッソよりはずっと使い勝手はよく、弱酸性から弱アルカリ性の水質に適応する。ミズニラは丈夫な水草で、日本産のものやヨーロッパ産のものが時折市販され、普通の水草が育成する環境なら、よく生長する。
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