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底床の意味

ネイチャーアクアリウムでは、水草を植栽する底砂の部分を底床と呼ぶ。以前の水槽の底砂は、一種類の砂などを使うことが多く、水草を育てるのにしても、砂に栄養素を混ぜる程度だった。
しかし、ネイチャーアクアリウムの底床は、複数の素材を組み合わせることで、水草の育成に適したものになっている。そこには、自然から学んだノウハウが生かされているのだ。

自然の土の中には、生物に由来する有機物が豊富に含まれており、これが無数の土壌微生物によって分解されることで植物が吸収できる形になる。つまり植物は微生物の協力があって初めて根からの栄養吸収が可能になるのだ。

この関係を水草の育成に取り入れたのがネイチャーアクアリウムの底床なのである。水草は根や葉から成長に必要な栄養素を吸収している。底床全体に根を広げるクリプトコリネの仲間やエキノドルスの仲間が根からの栄養吸収量が多く、底床の中に栄養素が十分に含まれている必要性がある。

底床内に微生物が豊富に存在することで水草が根から盛んに栄養素を吸収して健康に育ち、また水槽の汚れとして蓄積する有機物が分解されるため水槽の環境も安定する。ネイチャーアクアリウムの命とも言えるべき部分、それが底床なのだ。


底床の温度

水草の生長を考える場合、栄養状態だけでなく、底床の温度も重要である。熱帯魚を飼育る場合、水温が低下する時期には水槽にヒーターを設置する必要がある。これで水槽の水は25°C前後の熱帯魚の飼育に適した水温になるが、水槽を設置した場所の室温が低いと、底床の温度は低い
ままになる。水槽の水と底床の温度差か大きくなると、底床内の水が循環しにくくなる。

風呂を沸かす場合を考えるとわかりやすいが、比重の軽い温かい水は上のほうに集まり、下のほうには比重の重い冷たい水が集まる。このように温度差で層ができると、水は自然には混ざらなくなるのである。これと同じ状態が水槽の中でも起こるため、底床の中に新しい水が供給されなくなり、酸素が不足して状態が悪くなりやすい。また、植物の生理面からも、底床の温度が15°Cを下回るようだと根の働きが悪くなり、生長が止まったようになる。

この現象は特にクリプトコリネの仲間で顕著に見られる。底床の温度が低下すると葉の生長が止まり、付け根の部分から画葉柄が溶けてくる。これを予防するには底床の中にグロースプレートを設置し(ヒーターも入れる)、底床の温度を水温と同じくらいに保つようにすればよい。


パワーサンドの働き

底床内で栄養素の供給源となるのが、パワーサンドである。パワーサンドに含まれる栄養素には二種類ある。一つは徹生物が分解して初めて水草が吸収できる有機栄養素であり、もう一つは水草が直接吸収できる無機栄養素である。無機栄養素は、水槽セット直後から約一年間、継続的に栄養素を供給する。ただし、化学肥料だけでは形ばかりで味の薄い野菜ができてしまうように、人工的な無機栄養素だけでは水草は健康に生長できない。そのため、有機栄養素が重要になる。

有機栄養素は微生物が分解することで初めて水草が吸収できるが、水槽セット初期には底床内の微生物の量が十分ではなく、水草もあまり栄養素を吸収できない。そこで、パワーサンドの上か下に接するように、徹生物の発生源となる添加剤バクター100と、微生物の初期の餅になる添加剤クリアスーパーを薄く振りまくのである。

パワーサンドのベースとなっている軽石は、適度な大きさで表面が凹凸に富むため、水圧が掛かっても目詰まりが起こりにくく、通水性か維持される。底床内で有効に働く微生物の多くは生存のために酸素を必要とする。酸素は水によって底床内に運ばれるのでパワーサンドは物理的な意味でも適している。


底床素材の種類

パワーサンドの上には、制作するレイアウトのイメージや意図に応じて、さまざまな種類の底床素材を敷く。

現在、ネイチャーアクアリウムで最もよく使われる底床素材はアクアソイルであり、中でもアマゾニアは水草の生長が速いためよく使われる。最も基本的な底床のセット方法は、パワーサンドの上にアクアソイル-アマゾニアを敷き、前を低く後ろを高くならす方法である。この状態でもほとんどの水草はよく育つが、さらに底床の前のほうを中心に粒の細かいパウダータイプを敷くと、見た目がよくなるばかりでなく、根が張りやすいためグロッソスティグマなどの成長がさらに良くなる。

アクアソイルには、水質を酸性の軟水にする効果があり、カラシンの仲間やコイの仲間など、多くの熱帯魚の飼育に適した水質が実現できる。ただし、グッピーやアフリカン・ランプアイなど弱アルカリ性の水質を好む魚の飼育には適していないので、その場合はアクアソイルの代わりに、PHが低下しにくいアクアセラミックやアクアグラベルSなどを使用する。この場合、水草の生長はアクアソイル-アマゾニアよりも遅くなるが、その分維持はしやすいので、初心者に適したセッティングとも言えるだろう。


化粧砂を使う

最近のネイチャーアクアリウムでは、底床の前景部に化粧砂(レイアウトサンドきを使った作品か増えてきた。従来のネイチャーアクアリウムでは、石や流木を置いた部分を除いて、底床全体に水草を植栽していたが、前景部分に生長の速い水草(グロッソスティグマなど)を植栽した場合、前景部分が厚くなりすぎて、レイアウトのバランスが崩れやすい欠点があった。

そこで、水草の前景部分にあえて水草を植栽せずに底床を露出させる方法が生み出されたのである。このとき、黒っぽいアクアソイルなどが露出していたのでは、レイアウト全体の見栄えがあまりよくないので、露出させる部分には見た目に美しい化粧砂を使用するようになった。化粧砂としては明るい色彩のブライトサンドがよく使われるが、これと似た砂はすでに10年以上前のネイチャーアクアリウムで使われている。

その時は、水草を植栽する底床素材として使われていたのだが、水草の生長ではアクアソイルに及ばないため、底床素材の主流はしだいに砂からアクアソイルに変わっていった。しかし、単体でほ水草の育ちにくかった砂も、アクアソイルと組み合わせることで新しいレイアウト方法として碓立したのだ。



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